スマブラSPは、我慢大会である。
こんにちは。ネバダからキマした。と申します。未だにブログの書き出しの挨拶は「Sean(読めたら英語うま男)です」な気分が抜けません。
以前 SSQM こと Queen Melee の記事にも書いたように、僕はSPの競技シーンを辞めました。
そこから半年以上が経った今、別のゲームに熱中しています。どのくらい熱中してるかというと、たぶん今自分の人生で一番ゲームをやっています。熱中というより「熱狂」です。僕の熱狂具合は Twitter で確認してください。
そんな中、SPから離れ、距離を置いて別のゲームをやってると、自分が SP から離れた理由が少しずつ見えてきました。以前の記事では「これといった理由はないが飽きてしまった」というようにぼんやりと記しましたが、今回はそれを掘り下げて行こうと思います。
まず先に伝えておきたいことがあります。僕がこの記事を書くのは、決して「スマブラSP、そのプレイヤーを悪く言うため」ではありません。大乱闘スマッシュブラザーズSPそのものはとても良いゲームです。SPの良い点を挙げるとなれば、誰よりも詳細に語れる自信があります。
しかしここでは「競技としてのスマブラSPは皆が思っているほど良いゲーム・完璧なゲームではない」ということを周知したい。それを伝えることによって、ストレスの溜まっているプレイヤーたちにスマブラから距離をとって落ち着いていただきたい。
後述しますが、僕は現在のコミュニティの状態を憂いています。もしその渦中にいて、スマブラのモチベーションが保てずに悩んでる人がいたら、そんな人こそこの記事を読んでほしいと思います。このゲームであなたが苦しむ必要はない、そんな思いが本文から伝われば幸いです。
SPはいわば「我慢比べ」「我慢大会」だと俺は考えている。
スマブラをしていて楽しい瞬間とは何だろう?何度も見返したくなるようなかっこいいコンボを決めたとき?復帰阻止を決めたとき?……
しかし、そんな「楽しい瞬間」より「楽しくない時間」「我慢」の比重の方が大きく、そして重要になってしまうのがSP のゲームシステムなのだ。これこそがSPの一番の問題点だと俺は思う。
なぜそう考えるのか?
今からそれを二つに分けて綴っていく。まず最初に「ゲームシステムの問題」を解説する。その後それを踏まえて、「そのシステムの嫌いなところ」について話したい。
SPは「シールド、つまり防御が強い」。前作より改善したとはいえ、まだまだ強い。「攻撃」「防御」「防御崩し」の三すくみの中「防御」が他二つより比重が大きいため、濫用されてしまう。これが一番の問題点である。
なぜ強いと言えるのか?以下のことを考えてほしい。
スマブラには数多くの「かっこいい撃墜技」が存在する。相手をパワーでふっとばす理屈抜きの爽快な重いパンチ、モーションやエフェクトがかっこいいオシャレなキック……
しかしこれらを当てるのは容易ではない。撃墜技の多くは全体フレームの長い大技。当てるためには間合い、フレーム、読み……さまざまな要素をぴったり噛み合わせなければいけない。
一方、攻撃を受ける側、すなわち守りはどうだろう。絶対に当たりたくない怖い撃墜技たちはどうすれば防げる?簡単だ。「Rボタンを押さえること」。それだけで防げる。相手の攻撃のタイミングをぴったり計る必要も、攻撃を見切る必要もない。意図的であれまぐれであれ、とにかく食らったときにRボタンさえ押さえ続けていれば良いのだ。これだけで倒されることはない。
……いやいや、そりゃそうだ。ニュートラル状態、すなわちどちらも攻めていない・守ってもいない状態、にらみ合いの中でいきなり撃墜技が当たるはずがないじゃないか。そんな大技を当てるには、コンボを始めたり相手を飛ばしたりして、どうにか相手の択を狭めなければならない。それはどの対戦ゲームでも一緒だ。
となると、相手のコンボの始動技は当たりたくないな。どうやって防ごう。
簡単だ。Rボタンを押さえるのである。
Rボタンを押さえるだけで、始動技から撃墜技まで、ゲームの大半の技を無効にする。ゲームの防御があまりに強く簡単すぎやしないだろうか。
広い意味での防御の中には「後退する」「ジャンプや緊急回避で避ける」など他の行動も含まれるが、「最後に頼ることはシールドであること」「シールドが要の防御手段であること」、なにより「シールドが強いこと」に変わりはない。
シールドブレイクやシールド解除フレームはあるが、この強さに見合った短所とはとても言い難い。
多くの対戦ゲームでは事情が異なる。わかりやすいところで言えば、ストリートファイターはガードに上段下段中段とあり、相手の出す技を読んでそれに応じた段を選ばなければならい。他のゲームでは異なるシステムを採っていたりするが、どれをとっても、相手の攻撃を一つ防ぐのにも多く考えることが求められるのだ。
しかし、これを読んだあなたは無論こう思うだろう。「ガードされるなら掴めよ」「すかしって知ってる?めくりって知ってる?」「画面見ずにガードに突っ込んでそう」。
確かに SP にはガードに対抗するためにいくつかテクニックがある。しかし、それでもまだガードが強いということに変わりはない。
「ガーキャン行動」の存在
スマブラはガード状態から出せる技がいくつか存在する。上スマッシュ、上必殺技、掴み。そして空中攻撃(厳密にはジャンプ踏切フレームが存在する)。
スマブラを知らない人にこの説明を聞かせれば、まず言わずにはいられないだろう。
「え、強いじゃん。」
その通り。なにを隠そう、強い。スマブラを知り尽くした人に聞かせてみても、首を縦に振るだろう。
ガード状態からコンボ始動技を出せるキャラもいれば、そのまま撃墜技を出せるキャラクターまでいる。つい先ほどまで防御していたキャラクターが、強いシールド状態から一転して攻めに回れるのである。
「攻守交代!」と言えば格好良い響きに聞こえるかもしれないが、この場合あまり格好良いとは言えない。攻守両者とも切羽詰まった戦い・読み合いをしているならともかく、ここで防御側がしていることは「相手の技を見切ったり読み切るわけでもなく」「いつ攻撃が当たっても安全なシールドの中で」「相手が技を振ったのを確認してから、よし行こう!」。
この強い反撃技を食らわぬよう攻撃側は様々な工夫をする。ガードしてる敵の背中側に着地する「めくり」であったり、ガードに対して安全な技を振ったり…
しかし、めくりは根本的な解決にはなっていない。まだまだ防御側が強く、ジャンケンが成立していないのだ。
仮に相手のシールドをめくったとしよう。そこから防御側は何ができるだろうか?
まず、つかみはできない。シールドを解除して振り向いてつかみを入力するとなると何フレームかかるだろう。確かにその点はめくりで対策できる。
しかし、空中攻撃と上必殺技はどうだろう。シールドの裏側に回った程度で届かなくなる空中技はごく僅か。上必殺技に至っては反転して表側と全く同じように出すことができる。
めくられたところで、防御側が正しい選択をすればしっかりと反撃を取ることができてしまうのだ。そしてそれは「小足を見てから昇竜余裕でした」といったフレームや人間の能力を無視した非現実的な卓上理論ではなく、スマメイトに身を投じるような人間であればすぐ身に着くことである。
つまり、めくりとは「相手のミスを誘うために使うテクニック・小技」に過ぎず、「SPの防御の強さを抑えるシステム」にはなり得ないのだ。「すかし」にも同じことが言えるだろう。
確かにガーキャン行動の強弱はキャラクターによって異なる。しかし、「掴み・上スマッシュ・上必殺技・空中技」どれもが「始動技にもならず、展開は悪く、撃墜もしない」というキャラクターは両手で数えられるだろう。片手で充分かもしれない。余程のキャラクターが「何かしらの状況で有効なガーキャン行動」を一つは持っている。
「じゃあその状況を作り出さない」というのはそのキャラクターの限定的な対策に過ぎず、ガードに対するシステムとは言えない。
問題児…「その場回避キャンセル」
以下に関しては読み飛ばてもらってもいい。読み飛ばしてほしい。だがしかし、「その場回避キャンセル」に触れないわけにはいかないだろう。なぜなら一応これは、強すぎるカードに対してのカウンターとして作られた「システム」 だからだ。
なぜ読み飛ばしてほしいほどこのシステムに触れたくないのか。 なぜならあれは崩壊しきっていて悪く言う他ないからだ。冒頭でも触れたように、この記事はただ SP を悪く言うために書いているわけでは決してない。しかし、こと「その場回避キャンセル」の話となると……
読み飛ばしてほしい。もしくはここに広告を被せようかと思っている。
簡単に説明すると、これは「その場回避の硬直・後隙を地上攻撃でキャンセルできる」というものである。「シールドから始動技・撃墜技を出せる」ときたら、次はなんと「無敵状態から撃墜技を出せる」とまで来た。
そう、 シールドが強すぎるのであれば、毒をもって毒を制させよう、さらに上回るシステムを作ってしまえばいい、という話なのだ。
さらに問題なのがこの毒、なんと“シールド側も悪用できる”。読み間違いではない。念押ししよう。シールド対策のために作られたシステムが、 シールド側も悪用できてしまう。
それは困った。ではどうしよう。シールドからその場回避キャンセルを出された場合、どのように対策するべきだろうか。
しかし、そう難しく考えなくても良い。
こちらもその場回避キャンセルをしよう!
さらにこの仕様は、SPの入力遅延と著しく噛み合っていない。 SP にはオフライン対戦においても入力遅延がある。相手が緊急回避したのを確認して、さらにそこからキャンセルするかどうか、どの技でキャンセルするのか、それに対し自分はどう対応し入力するのか…… SPの遅延の中だと、これはもはや読み合いの範疇を越えて入れ込み合いの域だ。
ではオンラインならどうだろう? 語るまでもない。
リスクとリターン
話を戻そう。ガーキャン行動が存在する以上、防御側の選択肢があまりに多く、そしてローリスクだ。攻撃側はそのような不利な読み合いは避けたい。ではどうするか?手痛い反撃を受けない技、すなわち「安全技」を振るのである。(大げさに「無料技」と例えられることもある)
安全技には様々なものがあるが、これら全ての共通点はこうだ。外しても手痛い反撃を受けない、つまり「ローリスク」で、当たればコンボや撃墜に繋がる、すなわち「ハイリターン」だ。対戦ゲームにおいて、こんな技があれば振らない理由はないだろう。掘り下げて説明する必要もない。なぜなら「ローリスクハイリターンだから」。
おわかりいただけただろうか。上記の現状から、SPは「防御が強いため、ニュートラルでは反撃を取られづらいローリスクな技を振らざるを得ない」という対戦環境のゲームなのだ。
Without perfect pivoting there’s no micro movement to punish all these things with no lag. And so many things are safe on parry PLUS so many things are unreactable by parry. You have to get so many reads just to MAYBE win neutral.
— TSM FTX Tweek (@TweekSsb) 2019年4月3日
「そんなの、今さら。」そう、ここまでは多くの方がご存知でわりとよく聞く声である。tweekを始めとしたプロゲーマーの選手たちでさえこのような批判をしている。
それを踏まえて、ここからは少し違った視点で話していこう。前述の批判は「ゲームシステムから来る、ゲームシステムの批判」である。そうではなく、ここからは「ゲーム、すなわち娯楽としての批判」そして「ネバダからキマした。個人がスマブラを辞めた理由」を説明していきたい。
ここから俺の「感想文」になっていくことを了承してほしい。文章の校正は大歓迎だが、私個人の感想の歪曲は少しいただけない。
ゲームと我慢
ここまではシステムの説明をし、いかに防御が強いかを伝えてきた。先ほどの話をまとめると、SPは システム面において「攻め」が楽しくないといえる。防御の方がお手軽で強く、それを破るために攻撃側が我慢を重ねながら四苦八苦するゲームだからだ。
では「防御」側はどうだろう。
冒頭で少し話したことに戻ろう。SPは「我慢比べ」「我慢大会」であるという話だ。
なぜそのように考えるのか?ゲームの一番大事な場面、すなわち残機に関わり、一番緊張感が高まる場面で「我慢」がゲームプレイに大きく絡んでくるからだ。
今あなたと相手はお互いに蓄積ダメージが100%を超えているとしよう。絶対に撃墜されたくない。そこであなたは防御の態勢に入る。ライン後退、ジャンプでの攻撃避け……あらゆる手段を駆使するがやはり最後にすがりつくのはシールドだ。絶対に撃墜されたくない、絶対に勝ちたい……あなたはあらゆる思いを抱えながらシールドを貼りながら耐える。しかし、相手の攻撃が通り、撃墜されて負けてしまう。
つまりこうだ。シールドというRボタンを押さえるだけの退屈な操作をしながら辛い状況を耐えていたのに、読み負けた罰としてストックを取られる、試合に負ける……
「苦しい思いをしながら我慢して耐えたのに、負ける」。
今挙げたのは特殊な例で、めったに起こりえない事を大げさに挙げているだけだろうか?そんなことはない。競技シーンにおける敗北の大半がこのようなものだろう。SPにはそんな状況があまりに多過ぎる。
無論、全ての対戦ゲームを語るにおいて「我慢」は切り離せない。どのゲームにも我慢をする瞬間はあるし、我慢をしたのに負けて悔しい瞬間だってある。スポーツにでさえある。
しかしSPはそれが最悪の形で出てしまっているのが問題なのだ。防御の操作・行動が単調で面白くないことに加え、その時間が長すぎること、そして撃墜という一番緊張する場面でそれが毎回起こるので悪い形で印象に残ってしまうこと。
スポーツのように最後まで動き続けて戦ったのであれば「頑張ったのに負けた、悔しい」という負け方になるが、SPの負け方では「我慢したうえに負けた、悔しい」という気持ちが強く残る。
攻める時は防御側の理不尽とも言える強さに耐えながら、守る時は敵の攻撃に耐えながら。我慢して我慢して我慢したのに、負ける。
そんなことが一試合のたった数分のうちに起き、常態化している。果たしてこれは楽しいゲームなのだろうか?
楽しいゲームとは?
考えてほしい。もし仮にあなたが、今から新しいゲームを始めたとする。無料のスマホゲームでも、話題のSteam新作ゲームでも良い。あなたは長いインストールを待ち、ようやくゲームを起動する。しかしどうだろう。始めてみると、我慢やストレスの連続だ。自分は何もできず、敵に蹂躪されっぱなしだ。確かに楽しい瞬間はある。その瞬間はなんとも言えない爽快感がある。おそらくそれがこのゲームの売りなのだろう。とはいえど、それ以外は単調で我慢の連続だ……
(書いていて思ったが、これギャンブルやパチンコと一緒だ。それはまた別の話として……)
断言してもいい。あなたはこのゲームに熱中はしない。今後も楽しく遊ぶことはあるにしろ、日々競技的にやるほど「真面目に」やりたいとは考えないだろう。
楽しい時間より、楽しくない時間のほうが長い。そんなゲームは本来の「娯楽」の目的を果たせていない。
「スマブラはやめられない」?
ではなぜ皆、我慢が長いゲームであるSPはするのか?答えは思ったより単純だ。スマブラだから。
……と言うと耳障りの良いキマったセリフに聞こえるが、実態はそうではない。この「スマブラだから、やる」というのは呪縛だ。そしてその見えない呪縛は想像以上に我々を長く縛り続けている。それが顕著になったのは前作、スマブラ for 3DS/WiiU だ。
ここでは詳細な説明は省くが、あのゲームは競技として崩壊していた。壊滅的なキャラクターバランス、競技シーンの正反対のために作られたようなゲームシステム……。「あんなゲームを真剣にやっていたなんて。」ZeRoを始めとした数多くのプロプレイヤーが同じように振り返っている。そんなゲームにもかかわらず、我々は妄信的に大真面目にやっていたのだ。自キャラの日本一のプレイヤーになりたい、世界大会に出るあの選手を応援したい……そんな思いを抱えながら。このように「スマブラだから、やる」という呪縛が存在することは歴史が証明している。
ではその呪縛はなぜ存在するのか。どうして我々は「スマブラだから」と考えずに首を縦に振ってしまうのか。俺が考える限り、三つの理由が思い浮かぶ。それぞれの解消案も挙げていきたい。
①大好きなキャラクターがいる
これは案外馬鹿にならない、大きな要素だ。俺は20年近くMr.ゲーム&ウオッチというキャラクターに夢中だ。キャラクターデザインも好きだし、戦い方も好きだ。80年代の液晶画面からやってきたなんていう設定も、他のキャラクターにはない特別なものだ。俺が今でもたまにSPを起動したくなってしまうのは、彼がいるからに他ならない。
しかし、何も好きなキャラクターは彼だけではない。世にはごまんとゲームキャラクターがいる。好きなキャラクター数体のためだけに、あなたが我慢をしながらゲームをする必要はない。
もしそれでもどうしても会いたくなったら、別のゲームでMODを使ったり、プレイ動画を見て応援したり、思い出したときに時々起動して触ってあげれば良いのだ。
②コミュニティに属していたい
この呪縛はとても大きい。無意識のうちにあなたを縛っているかもしれない。どうしてスマブラをするのか?「みんながしているから」……。
スマブラのコミュニティは膨大だ。国内のゲームコミュニティーの中では三本指に入ることは間違いないだろう。もしあなたが出張や引っ越しで知らぬ土地に行っても、スマブラをしていれば大丈夫。ネットで検索すれば、二日後にはもう共にゲームをする仲間ができているだろう。
もしこれに心当たりがある方がいたら考えてほしい。あなたは誰のために、なんのためにゲームをしているのか。友達作りのため?輪から外されないようにするため?もしくは、上手くなって誰かに認められるため?
俺ならそれを、理由ではなく呪縛と呼ぶ。
③対戦アクションゲームは
スマブラしかないと思っている
これが最も大きな原因だろう。ストレスが溜まろうとも、皆スマブラのルールは大好きなんだ。叩く、ダメージを溜める、ふっとばす。ふっとばされてもステージに戻ってくる、戻れぬよう妨害する。
スマブラのルールは楽しい。これに関しては全員が黙って首を縦に振るだろう。しかし、ご存知だろうか。心して聞いてほしい。
そのルールを採用しているゲームは、他にもたくさんある。
海外ではこのルールを採用するゲームを「プラットフォームファイター」と呼び、ジャンルとして確立されている。つまりスマブラは他にはない特別なものではなく、プラットフォームファイターのタイトルのひとつに過ぎないのだ。
しかしそれを聞いてあなたはこう思うだろう。「それは『スマブラライク』といって、結局全てスマブラのパチモノ・下位互換だ」。確かに国内ではそのようなイメージが根強く残っている。ソニーのキャラクターが集まる大乱闘、ボンバーマンとリカちゃん人形が戦う対戦ゲーム……それらの失態が遺した印象があまりに大きい。
しかし、ある。今の世の中にはあるのだ。スマブラの競技シーンを磨き上げ、コアゲーマーのためだけに作られた1on1専用プラットフォームファイターが。これについては、また後日別の記事で説明させてほしい。
つまり、あなたはなにもスマブラに固執する必要はない。スマブラのルールが好きなだけであれば、それは「プラットフォームファイター」が好きなだけであり、あなたの肌に合う他のタイトルがいくらでもあるからだ。
スマブラ史上最高のあの日、コミュニティは。
スマブラは我慢大会である。その我慢大会にコミュニティ全体が蝕まれ、不健全な状態になっている。最後にひとつ、悲しいエピソードでこの記事を締めくくらせて欲しい。
2021年10月6日。世界中のゲーマーが湧き上がった。ゲーム史の歴史に残る日と言っても過言ではないだろう。「ニンテンドーオールスター」として20年以上前に始まった「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズに、キングダムハーツのソラが追加されたのだ。これがどれほどの偉業か、ゲーマーの皆さんに語る必要もないだろう。この瞬間には、誰がSPのプレイヤーかどうかは関係なかった。とにかく、皆で祝福した。
そんな中、素直に祝福できない人たちがいた。
「ソラは嬉しいけど、数カ月後にはどう思ってるかな。」
つまり、ソラの性能が嫌いになり闘うのが嫌になるかもしれない、というのだ。俺はこれらの書き込みを見たとたん、深く悲しい気持ちに包まれた。
ソラだぞ。多くのゲーマー達が夢にまで見た、あのソラがついに追加されたんだぞ。こんな時ぐらい、心から祝福できないのか。
しかし、この書き込みをした人たちには何も罪はない。彼らを責めるのも間違っている。一番辛いのは当の彼らだろう。
毎日やるゲームに、大好きなキャラクターが追加された。けれども、もしかしたら自分はこのキャラクターを嫌いになってしまうかもしれない。夢にまで見たキャラクターなのに……
俺の小さなタイムラインの中でさえ、このような書き込みが見逃せないほど見られたのだから、全体ではどのくらいになるのだろう。
彼らの中では「スマブラ→我慢→ストレス」という形が出来上がってしまっているのだ。だからこそ、こんな場面であっても「ストレス」を連想してしまう。悪いのは彼らではなく、スマブラでもない。パーティーゲームとして作られたものを競技として扱う、変則的な遊び方だ。
こんなことってあるか。皆が一番欲しかったキャラクターの追加を心から祝えない、それはもう「娯楽」として崩壊しているだろう。
俺はもう、むかし共に同じゲームを楽しんだ仲間たちが、モチベーションがないだのストレスが溜まるなどと落ち込む様を見たくない。ソラ参戦というスマブラにとって一番大きな日に、それが悪い形で出てしまった。
競技シーンにおけるスマブラSPとストレスは切り離せない。そのように出来てしまっているのだ。
だけどもここで皆にもう一度、胸に手を当てて思い出してほしい。小さい頃、分厚いテレビで大乱闘スマッシュブラザーズを初めてプレイしたあの日のことを。
追記
この記事を書くにあたってSPの問題点を考えていたら、次から次へと思い浮かんできました。プラットフォームファイターなのにニュートラルで台に乗ると不利になるため基本終点でありアクションゲームとしても地味であること、飛び道具キャラクターの問題点……。これほど長くなってしまった本文ですが、細かいところを挙げればまだ山ほどあります。興味がある方、また本記事について意見を述べたい方は下記のツイッターアカウントをご覧ください。